チゾルム『知識の理論』
- 作者: ロデリック・M.チゾルム,吉田夏彦
- 出版社/メーカー: 培風館
- 発売日: 1970
- メディア: ?
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
内容を改定した新しいものが出ている。
- 作者: ロデリック・ミルトンチザム,Roderick Milton Chisholm,上枝美典
- 出版社/メーカー: 世界思想社
- 発売日: 2003/04
- メディア: 単行本
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
今回は古いものから引用。
一つの青いもの、あるいはいくつかの青いものを知覚すれば、ものが青いとはどういうことかを知るようになる、したがって青いという性質はどんなものかを知るようになるであろう。また、一つの赤いもの、あるいはいくつかの赤いものを知覚すれば、ものが赤いとはどういうことか、したがって、赤いという性質はどういうものかを知るようになるであろう。次に、赤いということの知識、青いということの知識を手に入れれば、赤いことが青いということを排除すること、しかも必然的に排除すること、がわかるようになる。
(略)
この二つの例[引用者注:例をひとつ削りました]には、次の諸段階がふくまれているように思われる。(1)個物の知覚――前者では、赤い個物や青い個物の知覚、(略)。(2)抽象過程――ものが赤いとか、青いとかいうことはどういうことか、(略)を知るようになる。(3)性質のあいだの関係の、直観的な感知――前者では、赤いことは青いことを排除するという事実の感知、(略)。(4)この直観的な知識は、個物についての普遍妥当的な一般化を根拠づける――「必然的に、すべてのものは、赤ければ、青くない」(略)。
アリストテレスは、この過程を「帰納」とよんだ。しかし、その後「帰納」とよばれるようになったものと、この過程とは、本質的に違うのだから、ほかの名前、たとえば、「直観的帰納」などということばをつかうほうが、誤解が少ないであろう。
(pp.114-5)
直観的な帰納を行うためには――、すなわち、一つの性質を「抽象」し、それを観想し、それがふくむものと排除するものとを知るためには――ある個物がその性質を持っていると考えるだけでよいこともあるぐらいである。たとえば、青いものや赤いもののことを考えれば、青いことが赤いことを排除することがわかるようになる。この意味で、エルンスト・マッハ(Ernst Mach)は、「思考実験」についてかたったのである。(略)
(pp.116-7)