ユダヤ人とガン
以下は、ジョージ・L・モッセが19世紀末から、20世紀初頭のユダヤ人へのドイツ人の見方を、示したものである。
しかし、同化への努力がいかに大きかったにせよ、ユダヤ人は大抵、「国家内国家」であると考えられていた。たしかに、彼らは自己を組織化して、宗教的共同体としたのみならず、ユダヤ人の権利への侵害と戦うことをその目的とする、より大きな集団ともなっていた。(略)そこで支配的なのは、きわめて特徴的なことだが、自由主義であり、そのことが、自由主義者とユダヤ人の強制という嫌疑を確証するものと考えられたのだった。この共生こそは、国民的統一に心砕く人々にとって、ユダヤ人の「物質主義」を象徴するものに他ならなかったのである*1。
ここに出てくる「国家内国家」という言葉は、ナチス宣伝省のクルト・トマーラががん細胞に対する表現としても使っている*2。
このように、ナチス政権下では、反ユダヤ主義が医学用語にも浸透していたのである。